Design Thinking

Why?から始まる思考で考え、体験する。

 

これまでの事業創造の現場では、マーケティングリサーチが重視されてきた。どこに問題があるのか、どこに市場がありそうか、どんなニーズを持っているかについて、過去や現状についての情報収集を行い、分析し、仮説を立案し、検証した結果を踏まえて、事業化を図る。いわゆる、仮説検証型のアプローチであった。もちろん、その手法自体は極めて有効なものであるし、事実、多くの成果を生み出してきた。

しかし、マーケティングリサーチは万能ではない。それが有効に機能するには、ある前提があることを理解しておかなければならない。それは、事前に解くべき問題が認識できていることである。アンケートを設計する前提には、何を聞くのか、アンケートによって何を明らかにし、何を確認するのか、が分かっている必要がある。つまり、課題が特定できており、立案した仮説自体がある程度正確であることが求められることになる。

課題が曖昧で仮説が立案しにくい場合には、仮説検証型のアプローチは適用が難しい。そもそもユーザーはどういう課題を抱えているのかが曖昧であったり、ユーザー自身も気付いていなかったりする場合や、問題が複雑で多様な要因によって生み出されており、特定することが難しいようなケースでは、仮説検証型のアプローチでは問題の根幹を明らかにすることは難しい。

馬車が走っていた時代、人々に、どんなニーズがあるかを聞いても、人々は「もっと早い馬がほしい」としか答えなかった。しかし、ニーズの本質は、「より早く移動できる手段」というものであった。

従って確かに、問題の本質やユーザーのニーズがすでにある程度把握できている場合には、マスを対象とした仮説検証型のアプローチが有効である。しかし、0から1を生み出すようなこれまでの常識やルールを書き換え、人々の価値観やライフスタイル、パラダイムを変えるような画期的なアイデアやサービスは、ユーザーの生活や経験に深くすみ込み、観察や体験を通じて洞察し、ユーザーの抱える課題やニーズを再定義することで生まれる。その際、有効となる手法の1つがデザイン思考だといえる。

 

デザイン思考では、「どこに問題があるのか」「なぜ問題なのか」を明らかにするために、想定されるユーザーを観察し、共感を通じて潜在的な問題を探る点に特徴がある。「われわれが本来解くべき問題は何なのか」を問うことがスタートとなる。

スティーブ・ジョブスが「顧客は自分たちが欲しい物は知らない」と言ったとされるように、ユーザーが課題の本質を言語化したり、認識したりすることはまれである。スマートフォンが発売される前に、スマートフォンが欲しいと認識できていた人がどれだけいただろうか。しかし、ひとたび社会に投入されれば、それがない生活が考えられないほど、人々のライフスタイルに溶け込んでいく。

デザイン思考は、そうした人々のライフスタイルを変える、新しい文化を創り出すために、マスを対象とした定量的調査に先立って、個別具体的な現場を徹底的に観察・検証し、そこから得られたコンセプトが正しいかどうかを具体的なプロトタイプを作成してユーザーに使ってもらい、改善を繰り返す、地道なプロセスを重視する。

引用:0から1を創り出すデザイン思考 ― 新たなイノベーション創出手法
高知大学地域協働学部 講師 須藤 順

引用:日経デザイン

 

引用:日経デザイン

 

デザイン思考の生みの親である、世界的企画デザイン会社の「IDEO」は、

IDEOが「人間中心」と言うとき、それは必ずしも、顧客やユーザーだけを意味するわけではありません。組織も個人も「正解のない課題」に向き合い、「今まだ存在しない価値をつくる」ことを求められるこれからの市場においては、作り手の主観も重要です。人の潜在的欲求について探り、そこで得たインサイトを自らの意志として、新たなモノ、コト、ビジネスをデザインしていくのです。

世の中がどうなるのか」を予測するのではなく、「どんな世の中をつくっていきたいのか」を起点とし、関わる人すべての視点と考えを活かすアプローチ、これがIDEOの「人間中心デザイン」の本質です。

 

 


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