プロジェクトと知財法

 

自分の開発した技術を守るために、特に技術系、科学系の学問や開発に当たっている方々に共通しているのが、自ら技術が、その応用として、どのような点が改良されたら人々の役に立ち、さらなる技術革新(イノベーション)が創生され、市場に投入できるかを考えた経験があるとい思います。

 

アイデアを発展させて、本格的な研究課題とし、研究開発をすすめ、試作品を作り、製品化させ、商業化させていくわけです。

 

しかし、これらの過程で、自分のアイデアや具体的な技術を盗まれないように注意をしなければ、せっかくの努力が水の泡になりかねません。

 

このような、技術等を守るのが知的財産権で知的財産権には独占力があり、それにより、他者の侵害から守られるのです。会社の経営上、重要な発明を利用して事業の展開を図ろうとする場合は特に注意が必要です。

 

なぜなら、知的財産権は、自己が有する時はその独占性から強力な武器となりますが、他者が有する時は、自己の事業をやめさせることのできる力を有するからです。
特許権などの知的財産の権利が実際の製品にどのように分布しているかについて、パソコンについて説明しましょう。

まず、パソコンをパーツに分けてみると、

①画像処理装置やデータ処理装置

②ディスプレイ

③キーボード

④半導体チップ

⑤コンピュータプログラムおよびディスプレイ上の画像

⑥「SONY」「NEC」といったパソコン機器メーカーの表示、ブランド名などに分けることができるでしょう。

 

これを権利と対応させてみましょう。

①画像処理装置やデータ処理装置に関する発明(特許権)
 
②ディスプレイの形状,構造などに関する考案(実用新案権)
 
③キーボードのデザイン (意匠権)
 
④半導体チップのレイアウト(集積回路配置利用権)
 
⑤コンピュータプログラム、ディスプレイ上の画像(著作権)
 
⑥「SONY」「NEC」などの表示(商標権、商号権、不正競争防止法上保護される利益)

 

このように、パソコンがありとあらゆる権利で構成されていることがわかるでしょう。
六つの知的財産権の権利の内容について、概観してみましょう。

 

①特許権
特許権は、いわば、技術に関して、今までにないものを創作し、そのうち高度な創作について認められる権利です。特許権は、特許出願、審査請求,審査、登録を経て権利化されます。権利の存続期間は、原則として、出願の日から110年です(特許法六七条1項)。例外的に、五年を限度として、延長登録の出願により延長できる場合(医薬品の発明等)があります(特許法六七条二項)。

 

②実用新案権
実用新案権は、特許権とは異なり、審査がなく,出願すれば原則登録されますが、「権利を侵害された」と主張するためには、事前に審査を受けておく必要があります。実用新案権の存続期間は、出願の日から10年です 。
実用新案権のメリットは、出願後すぐに登録されること、費用が特許に比べやや低いことなどが挙げられるでしょう。ただ存続期間が短いこと、特許庁による審査が事後審査であることから、特許に比べるとあまり活用されていません。

 

③育成者権(種苗法)
種苗法とは、植物の新品種の創作に対する保護を定めた法律です。新品種の創作をした者は、それを登録することで、植物の新品種を育成する権利を得られます。この権利が育成者権で、その存続期間は、原則として、品種登録の日から二五年です(種苗法一九条)。
この権利は、特許権との関係で理解しておけば分かりやすいでしょう。特許は品種より上(イネの科、属、種)または下(有用遺伝子) のレベルを保護し、種苗法による品種登録制度は品種(コシヒカリ、ひとめぼれ等)を保護することとして運用されています。

 

④意匠権
意匠権は、同業者が容易に思いつかない「意匠」(デザインなど)について認められます。意匠権の存続期間は、原則として、登録の日から110年です(意匠法二一条)

 

⑤商標権
商標法上の商標とは、簡単にいえば、自己の商品を生産もしくは販売するにあたり、他人の商品やサービスと区別するために用いる文字、図形、立体的形状等をいいます(正確な定義は商標法11条1項に規定されています)。
商標には、出所識別機能(誰の製造·販売によるものかを示す機能),品質保証機能(一定の品質であると購入者に保証する機能)、宣伝広告機能があると説かれています(豊崎111-1四頁等)。
商標権の存続期間は、登録の日から10年ですが、いつまでも更新することができます(商標法一九条)。商品のネーミングは、販売成績を左右する重要なファクターですから、商標権侵害に関する諸問題などを、後で概観します。
デザインについても、商標法による保護が可能な場合もあります。

 

⑥著作権
著作権については、①と⑤の権利と異なり、官庁への出願を要さず、また、登録することな認められる権利です。技術者と関連性が強い問題点について後述します。