その3
『モノの世界が変動する〜IoTと連動する創造的破壊ビジネス』

 

 

IoTは「Internet of Things」の略語であり、日本では「モノのインターネット」と訳される。

モノがインターネットにつながりAI(人工知能)ビッグデータなどの技術と組み合わされることで、経済活動の効率性や生産性が大きく向上し、高齢・人口減少社会における経済、社会保障などの面で生じる課題を解決する手段として注目を集めている。

現在インターネットに接続された機器は100億と言われるが、2020年までには控えめに見積もっても250億に増加する。ビッグデータを超えた「インフィニット·データ」、つまり無数のデータの時代がやってくるのだ。

業界横断的に多数のモノが接続された「つながるIoT」を実現することが重要であり、それに適したプラットフォームが不可欠である。

そうしたプラットフォームにとくに求められる要件としては、多少の障害ではサービスが停止しないような「耐障害性」を備えることや、多数のモノやシステムの接続を容易かつ迅速に実現できる「拡張性」、異なるシステムやサービスが互いに通信することを容易にする「相互運用性」が考えられる。

IoTの価値を十分に引きだすためには、多数のネットワークを相互接続してひとつのネットワークのように運用できなくてはいけない。それに、集中型データベースの論理では、増えつづけるリアルタイム取引をすべて処理するのに多大なコストがかかってしまう。

こうした問題をすべて解決するのが、ブロックチェーンだ。

ブロックチェーンは確実で安心な分散型データベースを提供し、センサーをトリガーにした自動的なアクションや取引を可能にする。技術者やSF作家が夢見ていた世界、あらゆるものがネットワークに接続され、周囲の変化やできごとを検出してシームレスに協調する世界が実現する可能性を秘めている。

スマートデバイスにブロックチェーンを導入すれば、間違いや不正を心配することなく、デバイス同士で直接取引することが可能になる。データが消えたり改ざんされたりする恐れはないし、相手の過去の取引履歴もすぐに確認できる。集中型のデータベースや信頼できる第三者に問い合わせたり、取引を保証してもらったりする必要はない。

IoTは、複数のデバイスを複数の人間でパラレルに処理することが可能な技術なので、分散型のデータベースであるブロックチェーンとは相性がよい。

先進的な多くの企業がIoTとブロックチェーンの可能性に活路を見出そうとしているし、モノのインターネットにブロックチェーンが不可欠であるという認識は、各業界にも広がってきている。

IBMはブロックチェーンの重要性を強調している。

「大規模な集中型システムのイメージが強い分散されたIoTにおいて、ブロックチェーンはトランザクション処理およびデバイス間インタラクション調整のフレームワークとなる。各デバイスが自分の役割と行動を管理することにより「分散された自律的なモノのインターネット」が実現され、デジタル世界の民主化がやってくる。各デバイスは自律的に合意や支払い、交換といったデジタル契約を実行する。自らソフトウェア·アップデートを検索し、取引相手の信頼性を検証し、リソースやサービスの交換や売買を実行できるのである。これにより各デバイスは自己メンテナンス式、自給式デバイスとして機能できるようになる。このように人の手を離れて機能するデバイスが実現すれば、ひとつひとつのデバイスがマイクロビジネスを営むような新しいビジネスモデルも見えてくる」。

アイデンティティ· マネジメントやサイバーセキュリティ、モバイル通信などを手がけるワイスキー社は、製造業や半導体業界に働きかけ、認証機能を持った通信型I0Tデズバイスを大々的に展開しようと目論んでいる。

モレイラは「モノが信頼を肩代わりしてくれる時代に突入しようとしています。信頼できないモノは、周囲のモノたちから拒絶されます。誰に問い合わせなくてもそれが判定できるのです。これは非常に大きなパラダイムシフトです。取引の処理は今後大きく変わっていくことになります」と言う。

ブロックチェーンはモノに命を吹き込み、既存のビジネスモデルで行動するようなI0Tの世界を可能にするだろう。

インターネットは人と人を繋げたが、ブロックチェーンはさらにモノとモノをつなげてくれるのだ。

身の周りを眺めてみれば、効率が悪かったり、サービスが不十分だったり、コストがかかりすぎたり、危険だったり、思ったような成果が得られないことはいくらでも転がっている。ブロックチェーンでそれを変えていくことができるはずだ。

IoTが当たり前の技術になりつつある今、IoTはさらなる進化を遂げようとしている。 ブロックチェーンの技術は、IoTデバイスのトランザクションや認証を行うことができることから、IoTジャンルに革命を起こすものだと考えられている。

今後、電気自動車、スマートシティ、スマート家電、スマートホーム、農業、医療やヘルスケア、金融保険、ビルや不動産管理、書類管理などの様々な分野でブロックチェーンを使って管理することができるようになるはずである。

ブロックチェーンを使用した分散型IoTは、スピード、コスト削減、不正の防止、システムの信頼性、プライバシー保護等、P2Pネットワーク技術を応用した多くの可能性を秘めている。

 

S.M


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