その2
『金融の再編〜FinTechとブロックチェーンが変える金融の世界』
「ブロックチェーン」はもともと仮想通貨「ビットコイン」の基幹技術として発明されたが、その斬新性が脚光を浴び、今では、閉鎖せれてきた金融の世界をオープンなものにするイノベーションとして期待されている。
そのため、「ブロックチェーン」を「ビットコイン」として認識されることがあるが、「ブロックチェーン」はあくまで「分散台帳を実現する技術」であり、それをビットコインが使用しているに過ぎない。
これまで金融機関がある種独占的に提供し、変化に乏しかった金融商品やサービスを、ICTを活用することによって、利用者の目線から「安く、早く、便利」に変えていこうとする動きが活発化している。
FinTechである。FinTechは、FinanceとTechnologyを組み合わせた造語でスマートデバイスやビッグデータ分析、人工知能(AI)などを活用した金融サービスである。
つまり、伝統的な金融機関のシステムやサービスにおいては、その性格上、堅確性や確実性が求められていることから、金融機関における企画・商品開発プロセスは柔軟性が低く、新規の商品・サービスのリリースまでに時間がかかる傾向があったからである。
こうしたグローバルな潮流を踏まえた利便性の高いサービスの開発は不可欠である。
米国では、この動きは予想以上に速く、破壊的イノベーションと言われるFinTechはモバイルやクラウドのインフラ整備の拡大により、消費者の生活と業界の構造を劇的に変化させている。
日本でも、消費者や企業にとって、より利便性が高く、効率的なサービスの創造に向けて、金融機関が、様々な外部事業者やフィンテック企業やICTベンダー、商圏の異なる他の金融機関とつながりで、保守伝統的に守られてきた銀行の体質を改善し、サービスの改善と、より消費者目線に立ったサ持続的サービスの創出の確立が期待できる。
FinTechが成立した理由には、スマートフォンの急速な普及とリーマン・ショックによる金融サービスの縮小による中小企業に対する貸し渋りや貸しはがしが横行したため、その弊害を埋めるべく、新しい審査手法に基づき融資する事業者が次々と現れたことにある。 FinTechが提供するサービスは多岐に渡り、決済サービス、個人事業者向けサービス、資産管理・運用、家計簿サービス、セキュリティ関連サービス等が存在する。
ブロックチェーン技術は、FinTechが革新する金融システムのインフラを加速させ、金融取引のコストを劇的に削減できる可能性があると期待されている。
普通の銀行の台帳は、銀行と預金者しか使えない。当然管理は銀行の中だけで行われる。
しかし、個人情報はもちろん資産情報まで銀行に管理される。しかし、ハッキングが行われれば個人情報が盗まれ、資産を失い、犯罪に巻き込まれる可能性もある。
ブロックチェーンでは、ネットワーク内で発生した取引の記録を「ブロック」と呼ばれる記録の塊に格納する。。個々のブロックには取引の記録に加えて、1つ前に生成されたブロックの内容を示すハッシュ値と呼ばれる情報などを格納する。このブロックに書き込まれた情報は消すことができず、破棄もできない。出来ることは書き足すことだけだ生成されたブロックが、時系列に沿ってつながっていくデータ構造が、まさにブロックチェーンと呼ばれる理由だ。
もし仮に、過去に生成したブロック内の情報を改ざんしようと試みた場合、変更したブロックから算出されるハッシュ値は以前と異なることから、後続するすべてのブロックのハッシュ値も変更しなければならず、そうした変更は事実上困難。このように、ブロックチェーンは改ざん耐性に優れたデータ構造を有しているのが大きな特徴である。
ブロックチェーンのメリットは、①過去の情報からのデータを要約し、新しいデータを加えながらブロックをつなぐため、データの改ざんが難しい、②分散型ネットワークなので、ある人のパソコンが壊れても、他の人が同じ帳簿を持っているので障害に強い、③個人と個人が直接結びついて取引ができ、銀行や仲介会社を介さずに送金などができるため、仲介コストが省け迅速に取引できる、といったものだ。
海外、国内ともに金融業界におけるブロックチェーン技術への期待は高く、多くの実証実験がなされ、仮想通貨や送金サービスについては、一部の金融機関が実用化に踏み出した。
ブロックチェーンは銀行や国が行う中央集権的管理を分権化する技術であるとも言える。
S.M