その4
『ビジネスの改変〜ブロックチェーンで変わるサービス』
◆貿易取引におけるトレードファイナンスの改善
トレードファイナンスは、
金融機関、輸入業者、輸出業者、物流会社など業界を跨いだ関係者が多く、
物流、商流、金流それぞれにタイムラグがり、非常に煩雑な事務作業が発生している。
商品の引き渡しと代金決済にタイムラグがあり、代金回収リスク回避のために、
取引相手が支払うことを金融機関が保証する信用状(L/C)を紙ベースでやりとりをする。
この信用状の手続きは非常に煩雑で、取り扱いに要する時間も長い。
これまで郵送やメール送信などにより紙ベースで共有していた信用状や契約書などを、
ブロックチェーン上の台帳として各々が保持することで、
取引状況の更新にあわせて関係者の間でほぼ同時に情報を共有することが可能になる。
スイスのUBS銀行とIBMなどがこの信用状取引へのブロックチェーン適用の実証実験に取り組んでいる。
UBS銀行によると、これまで信用状の手続きに、
36種類の書類を発行し、7日程度を要していたのに対し、
ブロックチェーンとスマートコントラクトにより、1時間へと大幅な時間短縮が確認できたという。
今後、こうした信用状の手続きだけでなく、
実際にモノが引き渡されたタイミングで自動的に事務処理や決済処理が行われることも予想される。
このケースでは、ブロックチェーンの高い相互運用性と記録や履歴を確実に残しトレーサビリティに優れる点が、業務の目的に適合的であると考えられる。
NTTデータは、日本、イタリア、米国等でブロックチェーンに関する実証実験またはシステム開発を実施し、日本初となる貿易取引の実証実験で有効性を確認したという。
◆医療分野でのブロックチェーン活用と課題
ブロックチェーンは金融業界のみならず、さまざまな業界のビジネス構造に大きな変化をもたらす可能性を秘めている。2017年現在、そんなブロックチェーンにとりわけ熱い視線を注ぐのが医療業界である。
現在、医療分野では一人一人にあわせた治療のニーズが高まっており、
一つの巨大なマーケットを構成している。
IBM Institute for Business Valueの調査では、調査対象の医療機関のうちの実に9割が、2018年中にブロックチェーン関連に何らかの投資を行う計画であると回答しているという報告がある。
いつ、どんな治療を受け、どのような薬を服用したのかを信頼できるロングデータとして記録できれば、医師の経験値だけに頼らず、1人ひとりに合った、まさにオートクチュールな治療を患者に施せるでしょう。また、医薬品の製造・流通に関する過程を逐一記録して管理できれば、より安全で質の高い薬を提供でる。
ブロックチェーンを医療分野へ活用する際に問題となるのが、
どのようにして患者のプライバシーを保つかという点だ。
医療分野のユースケースとしては、ブロックチェーンを利用したドナー登録、医薬品のサプライチェーン管理、ウェアラブル機器データの利用に関するユーザー主導のパーミッションなどが検討されている。また、プライバシー保護の分野では、ブロックチェーンを利用した個人データ保護対策(分散型プライバシー)などの研究が進んでいる。
「ヘルステック」や遠隔医療を進めるためには、この「ブロックチェーン」は不可欠で、特に電子カルテなどの個人情報への厳格なセキュリティが必要な、「ヘルステック」の核といえる部分で使われる。
遠隔医療の核といわれる部分は画像診断と電子カルテである。画像診断などビッグデータにかかわる部分ではAI=ディープラーニング技術が今後、企業の差別化には不可欠だが、遠隔医療はドクター・トゥ・ドクターといわれる「診療所と中核医療施設」の間の医師間でスムーズに取り交わされる情報交換の「自由化」といえる。
そのさい「暗号化/匿名化/電子署名によるセキュリティ機能」を実装し、「電子保存の3原則」を担保できる技術が必要だが、それを支える暗号技術が「ブロックチェーン」である。
今後は、医療分野におけるブロックチェーン利用を可能にするクラウド型のサービスが、ネットワーク、プラットフォーム、アプリケーションの各レイヤーで登場するだろう。IoTやビッグデータなど、医療機器と連携する新技術領域には、ブロックチェーンとの親和性が高いところが多く、イノベーションが期待される。
今後、考えられるブロックチェーン技術の適用が期待されるサービス
- 金融 : コストのかかる従来のワークフローを見直して、流動性を高め、資本を解放します。インフラストラクチャへのコストを削減し、透明性を高め、不正のリスクを軽減して、取引や決算のスピードアップを図る。決済/為替/送金/貯蓄
- 証券取引
- bitcoin取引
- ソーシャルバンキング
- 海外送金
- トレードファイナンス (貿易金融)
- サプライチェーン
- マーケットプレイス
- ストレージ(データ保管など)
- IoT
- 市場予測/未来予測
- 公共(投票など)
- 医療(医療情報):患者の記録を病院や会計部門に直接つないで、医療情報のやり取りなどに関する第三者の検証を省きます。複数の医療機関や地域において、安全性の高い認証方法で個人の医療記録にすばやくアクセスできるようにします。認証(デジタルIDなど)。
- 資産管理(土地登記等の公証など)
- 資金調達(クラウドファンディングなど)
- 寄付
- ポイント/リワード
- シェアリング
- コミュニケーション(SNSなど)
- コンテンツ(ゲームなど)
- 行政: 支出の透明性と追跡可能性を高めます。車両などの資産登録を追跡できるようにします。また、不正のリスクや運用コストを低減。
- 小売および製造: サプライ チェーン管理、スマート コントラクト用プラットフォーム、デジタル通貨を強化し、より強固なサイバーセキュリティを可能にする。
S.M