「願いを叶える」。難病と闘う子供達に夢を与える
メイク・ア・ウィッシュ(MAKE A WISH)ジャパン
事務局長 鈴木 朋子さん

 

「ねがいごとをする」という意味のボランティア団体メイク・ア・ウィッシュ(MAKE A WISH)は、3歳から18歳未満の難病と闘っている子どもたちの夢をかなえ、生きるちからや病気と闘う勇気を持ってもらいたいと願って設立された。その日本の地域を統括するメイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパン事務局長の鈴木朋子さん。

子どもたちに勇気を与える事に加え、社会における非営利組織の存在の重要性を自覚し、社会貢献の「場」を提供する有意義な存在となることを目指す、その情熱や思いをお聞きしました。

(聞きて:村上 駿介(ガクビズ代表) 取材日:2017/12/28)

 

村上  まず、鈴木さんがメイク・ア・ウィッシュ(MAKE A WISH)の活動を始められたきっかけをお聞かせください。

鈴木  以前、アメリカにいたことがあって、その時にメイク・ア・ウィッシュの活動を知りました。その時、子供達の夢を叶えるために、多くのボランティアの方々が活動している姿に感銘を受けました。日本にいると、ボランティアは大変そうで私には無理と思っていたことが、海外に出て見ると、実はそんなに難しいことではなく、簡単なことだと感じました。困っている人がいたら助けてあげるという、実に単純なことだと気づいたのです。日本での活動は、もう17年になります。

村上  メイク・ア・ウィッシュは難病と闘っている子どもたちの夢をかなえ、生きるちからや病気と闘う勇気を持ってもらいたいと願って設立されました。ボランティア団体や寄付団体は世界中に多く存在します。お金を寄付するだけの団体も存在していると思いますが、与えるだけの価値は本当に人々のためになっているだろうか?とふと考えます。

鈴木  確かにそうだと思います。自分の寄付したお金やものがどのように利用されているんだろうと。寄付はできるだけ子供たちのために利用したいとの思いから、当初は広告宣伝費を一切使わずに運営してきました。寄付の使い方が大事と思います。寄付をいただいたものは、実際には運営費などに回されることも多く、実際にはその何割かしか利用されていないという状況もあります。そういうことはやはり申し訳ないと思い、そういう意味でも広告宣伝の利用を控えていましたが、これからもっと私たちの活動を世の中に広めていくためには、やはり広告は必要と思い、現在はACジャパン(1)に広告を出しています。

ACジャパンは、広告を通じて様々な提言を発信し、住みよい市民社会の実現を目指す民間の団体です。

村上  特に、ボランティア活動をする上でのご苦労されていることや必要なことは何でしょうか。社会から、まだ、大きな縛りがないこの時期を生きる、私たち学生にできることは何がありますでしょうか?社会に飛び立つ前に、本当に有意義で自己の形成に役立つことを考えた場合、ボランティアは一つの選択肢でもあります。

鈴木  日本ではボランティアということにはまだ、積極的でないというか自然に入り込めない状況があると思います。みなさん、あったかい気持ちが多いのに、すごく難しく考えてしまって、変に頑張ろうと思ってしまったりしていると感じます。私たちは、いつもボランティアの皆様には、絶対に無理をしないでくださいと伝えています。無理をしてしまうと続かなくなりますので、「できるときに、できることを、できる範囲で」ということを皆さんにお願いしています。もし、余裕がない時などは、どうぞお休みしてくださいと伝えます。1年ぶりであっても、活動頻度に関係なくお迎えします。やはり、無理をしないでいただきたいと思っています。無理をした状態で、ご本人やご家族にお会いしても、うまくコミュニケーションが取れないと思います。心に余裕がないとお互いに信頼関係が築けないと思いますし、私たち自身も気をつけています。ボランティア活動の中ではやはりコミュニケーションがとても大事です。特に、ボランティアを受ける側の方々は、してもらっているという感情をお持ちになっていることも多く、私たちは、してあげているというような感情はないですが、やはり、申し訳ない気持ちを抱いていることが多いと感じます。

村上  貴団体が他団体との違っていること、思い描く理念は何でしょうか?また、活動には大変ご苦労な面が多いと思いますが、それはどのように貴団体の活動に生かされているのでしょうか?

鈴木  大事にしているのはマンパワーです。運営のためのお金は不可欠ですが、大事なのはマンパワーと感じます。子供達の夢を叶えるプロジェクトを実現するためには、皆様からのご寄付が必要になりますが、私たちが大事にしていることは、「心を届ける」ということです。そのことが他団体とは違うかと思います。さらに、一人一人の状況にこだわります。私たちの活動にもちろんマニュアルがありますが、その方々の環境や状況を見ながら行動することになりますので、マニュアルどうりにはいかないことも多いです。

スタッフは全国で24名ほどいます。スタッフは責任ある立場として、コーディネートやマネジメントをしています。他はボランティアの方々が実際のプロジェクト実現のために日々行動してくださっています。そういう意味で、メイク・ア・ウィッシュの財産は人なのです。

村上  難病の子供達は、病院という閉鎖的な社会で孤独と闘っているとも思います。もちろん、家族や優しい病院関係の方々に囲まれているとしてもです。先行きの見えない状況、不安や苦痛との闘いの中で、生きる希望や喜びを得させるために必要なことは何だとお考えでしょうか。貴団体の活動も含めてご教示いただければと思います。

鈴木  重い病気にかかっている子供やご家族の辛さを自分でどこまで分かっているのか?をいつも考えます。私たちは、重い病気で苦しんでいる方々との関わりの中でも、家に帰れば日常に戻り、普通の生活をするわけですが、思うのは、いつでも笑顔を届けたいということです。どんなに小さなことでもたくさんできたことを数えると、同じ結果であっても、一緒に嬉しい気持ちになります。だからこそ笑顔を届けたいと思うっています。

夢の実現は、結果的に生きる希望につながるとは思いますが、「願う」という気持ちを届けることがすごく重要と感じます。小さい子供たちは、夢やWishの意味を理解できないことも多いですが、「いつも思っていることを話してね」と言っても自分では気づいていない。例えば、美味しいものを食べたい、休みの時どこいこうとか、何かしら、思っていることがあっても、それを願いと思えば、叶った喜びの実感が味わえると思います。いつも、子供達から学ぶことなのですが、一つ願い事が叶うと次の目標が見つかったり、それが積み重なると間違いなく生きる希望につながったりすると思います。このことは、子供達から教わったことです。大人はあれもこれもしたがるのですが、願いを少し残す工夫が大事で、その積み重ねが願う気持ちを強くして、自分の本当の願いとして思うようになります。私たちはドリーム(夢)を叶えるのではなく、「Wishを叶える」と言っています。願う気持ちは、子供であっても大人であっても一緒と思います。

病気の方々は、病気だからしてはいけないこと、病気だから我慢しなければならないと考えることがあると思います。確かに大変な日常がありますが、もっと羽目を外してもいいんじゃないかとも思います。私たちみんなが、同じ気持ちで寄り添うことができればいいと思います。「夢を叶える」という誰でも喜ばしいことをみんなで共有したいのです。

周りに、ご病気の方がいると、その方に気を使ってしますことが多いと思います。楽しいことは特にそうで、つい、内緒にしてしまうことがあると思います。大変でしょうとか、つい声をかけてしまうことが多いのではないでしょうか。でも、楽しいことや社会とのつながりをもっともっと知らしめていきたいと思っています。病気を患っている方々と社会との橋渡しができできたらいいと願っています。それが、メイク・ア・ウィッシュの存在している意味でもあり、目標でもあります。

村上  私たち「ガクビズ」も学生団体ですが、他の学生団体がボランティア組織が多い中、弊団体はソーシャルを起点にしたビジネスを展開しようとも考えています。弊団体が貴団体にご協力できることはどんなことでしょうか。

鈴木  私たちの活動をもっともっと知らしめてほしい思います。私たちが朝起きて当たり前のように生活していることがいかに尊いことかを実感する必要があります。私たちが接する子供達の願いは、兄弟に会いたい、コンビニに行きたい、学校に行きたいとか私達には当たり前のことが、彼らにはかけがえのない願いだったりします。普通、私たちは今日は学校に行きたくないなとか、思うことがあっても、もし、自分が病気なったりして行きたくてもいけない状況があったとしたら、どうだろうかとすぐには思い浮かばないでしょう。子供達は自分の願いを私達が、思いを託してくれているんだと気づいてくれることで、友達との会話や毎日が変わってくると思います。子供達も私たちの団体の存在に気づいてくれれば、それはとても素晴らしいことです。

特に笑いはとても重要で、とてもエネルギーを使うんです――辛い時は笑えないでしょう。病気の子供達の中には笑わなくなってしまう子はいっぱいいます。私たちがお手伝いしている中での、あるおやごさんの言葉です。
「とっても素敵な夢が叶いました。久しぶりにこどもの笑顔を見ました。兄弟がふざけあってる姿を見て幸せでした」このようなお言葉をいただくとき、お父さんお母さんは久しくお子様の笑顔に接することがなかった、できなかったんだと思います。
こういう時間を提供できること、(子供たちが)笑顔でいるということがどんなに尊いことかを改めて実感する時です。思い通りにいかないことがあっても、笑えている自分がいれば良いと思います。

村上  若い人たちにメッセージ、ご支援を考えられている皆様にメッセージがあればお願いします。

鈴木  若い方には想像力を働かせ、頭を柔らかくして、社会貢献活動というような硬い考えでなく、肩の力を抜いて、できるときにできることをやるという姿勢でいいと思います。願いを持っていただき、仲間を大切にしていただきたいです。

17歳の男性が事務所に直接来て、車椅子が欲しいと願いを伝えにやって来ました。彼は骨肉腫という病気で苦しい闘病生活を余儀なくされていましたが、その後、病気に打ち勝つ努力を重ね、数々の奇跡を起こしました。「僕は骨肉種になって全てを失ったと思った。しかし、結果的にはそれ以上大切なものを手に入れることができた。夢をあきらめないこと、その夢は自分一人の力では叶えられない。周りの人の力を借りること。周りの人への感謝を忘れないこと。その感謝に報いるために、自分自身が夢をあきらめず、自分を信じること」だと語ってくれました。また、「車椅子だけでなく、夢をあきらめないこと、自分を信じる勇気をもらいました」とも言いました。彼は、その後、大学入学を希望しましたが、出席数不足で単位を取れませんでした。でも諦めることなく、大学検定試験を受け、見事、大学に合格しました。海外旅行にも行き、運転免許も取得しました。素晴らしいことだと思います。

いつも、Wishを持って欲しいと思います。願いは必ず叶うという気持ちも大切ですし、目標を目指すことはとても尊いことだけど、心が折れそうになった時には「助けて」と言える勇気を持って欲しいです。

ご家族の方々はご自分たちの努力で実現したいと思っていると思いますが、ご家族の方々も含めて、私たちにお願いに来て欲しいと思います。

 

「メイク・ア・ウィッシュ」とは英語で「ねがいごとをする」という意味のボランティア団体です。3歳から18歳未満の難病と闘っている子どもたちの夢をかなえ、生きるちからや病気と闘う勇気を持ってもらいたいと願って設立されました。メイク・ア・ウィッシュは独立した非営利のボランティア団体で、宗教的、政治的団体ではありません。

メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパンは上記のように子どもたちに勇気を与える事に加え、社会における非営利組織の存在の重要性を自覚し、社会貢献の「場」を提供する有意義な存在となることを目指しています。

メイク・ア・ウィッシュ

 

取材後

鈴木さんは、とても優しく穏やかに活動内容を語ってくれましたが、情熱が感じられ、芯の強さを感じました。それだからこそ、このような活動を続けられてきたのだと思います。私たちも、何かできることないかを考えています。ガクビズはこれからも「メイク・ア・ウィッシュ」を応援していきたいと思います。

ガクビズ代表
村上 駿介

ガクビズスタッフ一同


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